覇気のなさには腹が立つが、覇気のない人に何で覇気がないんだあと怒ったところでそれが無意味だという事を私は知っている。覇気がない人には、覇気がない人なりの美意識がある。そしてそれはおしなべて、覇気のある人の美意識に勝っている。
(金原ひとみ「デンマ」)

若いころは覇気のある方だったので、テンションの低い人が苦手だった。最近は、そんな低テンションの人たちの方にむしろおもしろさを感じるときも多い。

 

【関連語録】

「国を愛するのは大事だが、他人を憎んではいけない。この国は多様性が力なのです」
(アウンサン・スーチー)

もしかしたら個人だってそうかもなあ。
ひとりの人間が抱える多様性。
左脳が決断しようとしたことを、右脳が疑い、腸が拒否する。
脳が生まれる前は腸が生命活動を維持するための判断を担っていたと、寄生虫博士の藤田紘一郎さんが『脳はバカ、腸はかしこい』の中で言っていた。
芥川賞作家の平野啓一郎さんは、個人ではなく「分人」を提唱していた。
「個人」なんてものが、そもそもほんとうにあるのか。じつは左脳がつくりだした戦略? 幻想?
そうであるならば、自分探しをしているかぎり、けっして自分は見つからなさそうだ。
自分をやめてみる。

生物の多様性もしかり。娘よ、ゴキブリを憎んではいけない。