(市原千尋)

45年生きてきて、いちばん思うことである。

「断捨離」ブームのはるか二千年も前から、禅がおしえていたのは、そういうことなのだと思う。

科学技術や人類の進化についても、あてはまるし、身近には、個人の物欲にも応用できる。

僕は道具が大好きなので、あれこれ欲しくなってしまうが、買うときに必ず考えるのがこれ。ときには数ヶ月から数年、思考の変遷をメモに残す。

得ることによるメリットと、失うもののデメリットを比較する。

どんなにそのときは熱病のように欲しくてしょうがないものでも、数ヶ月後、たいがいのメモは以下の言葉で終わる。
「廃案。買わないメリットの方が大きい」

自由とは

「欲しいものが手に入ることで振り回され、かえって不自由だった」
(谷口礼・四国遍路を続ける鍼灸師)

ボロ車にはボロ車でしか味わえない特別な自由の感覚というものがあるのだ。それは車を滅茶苦茶にぶっつけても全然やましい思いをしなくて済むことが生む感覚である。まるで自分が不滅の、痛みというものをいっさい知らない存在になったような気がするのだ。
(スチュアート・ダイベック『荒廃地域』柴田元幸訳)

外装はボロ、でも駆動系の機関は油でよく磨きこまれ黒光りしているような車両は、見ていて好きだな。クルマ、オートバイ、チャリ、電車、なんでも。

制限が多いほど、自由になれる。制限がまったくなければ、人は何をしていいか分からないだろう。
(市原千尋)

俳句もしかり。授業中の夢想しかり。

「役割を変更し、かたちを変えていく。その変身の速度のなかでしか、市民社会の自由はない」
(土屋恵一郎・能楽評論家)

「科学は一つの問題を解決するのに、いつも十の問題を新たに作りだす」
(バーナード・ショー/劇作家)