(北野武)
ベネチア映画祭で北野武さんが「死」と「暴力」という彼の映画のテーマのことをたずねられたときのコメント。
北野さんが言った「笑い」は他者に向けられる笑いのことだと思うが、自己に向けられる笑いとしては、こう言える。
笑いと絶望は表裏だ。
映画「嫌われ松子の一生」で、落ちに落ちた松子がひさびさに再会した弟に面罵されながら金を借りるシーンの最後に見せる笑いは、迫力のある演出だった。
絶望の末の自殺を自己に対する暴力と捉えるならば(自殺はえてして他者に向けられた意図的な破壊も内包しているので、他者への暴力ともいえるのだが)、言説は還流する。
笑いと暴力は表裏だ、と。