湖も池も、法律的には川だったりする?
一般的に、水深や規模の大きさで池と湖は区分されているとか、天然のものは湖か沼で、人工のものは池といった区分があるとか分かりやすい説明がありますが、全国の湖沼をめぐってきてみて、小さかったり浅かったりするのに湖と名付けられていたり、人工ではなく天然由来、おまけに水深もあってカンペキな「湖」スペックなのに「池」と呼ばれていたりする事例は少なからず目にしてきました。
定常的に水が貯まっているものが池であり湖沼なので、当然、水の入口と出口があります。法律上の区分としては、流入河川なり流出河川がある場合、池だろうが湖だろうが「河川」と位置づけられ、法律や条例のもとで運用されています。
ただし川であれば、なんでもかんでも河川法の対象となっているわけではなく、国土保全や国民の生活に重要な影響を及ぼす河川のうち、さらに指定区域を設けて、「一級水系」「二級水系」などと細かく区分して責任体系を明確化し、法律を適用させています。
一級は国土交通大臣が直轄管理し、二級は都道府県知事の管轄。数は一級が109水系。
当初、もっと多くを指定しようとした建設省に対し、予算を握る大蔵省が「せめて除夜の鐘ぐらいに」と109になったという冗談のような話を建設官僚だった父から聞いたものですが、国が直接、予算を投じることができるので、あまり多すぎても大変なんですね。一級水系の下に一級河川が1万4千ほどぶら下がっています。ほか、市町村が管理することになっている「準用河川」があります。
そしてなんと、一級でもなく二級でもなく準用でもなく、河川法の適用外となっている川もあります。
無法河川なの? と、ちょっとビックリするかもしれませんが、こういった法定外河川は「普通河川」に区分され、事実上は市町村など自治体の公共財産として条例などで管理されています。なので法定外ではあっても、無法地帯というわけではありません。
小さな溜め池の多くは、これら普通河川を堰いたものが多いので、管理運用のルールはその土地の事情に合わせて融通がきいたわけですが、2019年に農水省によって「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」が定められたことにより、日本の歴史上、初めて溜め池の定義と統一ルールが定まったように思います。
もっとも湖沼法と呼ばれる法律がないわけではありませんが、湖沼を網羅的に管理運用する法律ではなく、環境保全を行うために特別に指定をするといったスタンスで、国内で適用されているのはわずか11湖(2018年現在)しかありません。
ところでちょっと問題なのが、ときおり流入河川も流出河川もどちらも持たない湖沼もあります。この場合、河川法の適用外になってしまうので、法律上の区分としては、・・うーん、どうなるんでしょう。
これは山林の一部として林野庁だったり、国立公園に含まれるものとして環境省だったりの法律のもとで管理されることになると思います。いずれの法にも縛られない無法池が、まだこの国にはあるかもしれないなどと変なロマンを抱いたりしてしまいそうですが、この項については機会を見て法律にくわしい方にも訊ねてみたいと思っています。
弱気の「ですます調」なのは、法律は厳密さが命だけに、専門家でもないのにあいまいな知識で語れることではないので、あくまで湖vs池に対しての水辺遍路からの問題提起と思っていただければと思います。
記述の誤りなどご指摘いただければ幸いです。
(2018年12月)
「湖沼型」という分類もあるけど?
ずばり英語でLAKE TYPE。日本語では湖沼標識という言い方もするようです。
ウィキペディアには「物理的・化学的・生物学的性質によって総合的に分類」という説明が出ています。「生物生産と環境要因の観点からの分類」ともありますが、分かるような分からないような。ざっくり言うと、魚や水生動物、水中や水辺の植物にスポットをあてて、こんな水質の湖沼なのでこんな生き物が生活できます、というような分類法です。特定の魚の養殖にむいているかどうかの判断基準や、水質悪化で生物層が変化した際などの指標として使われています。
そう見れば、大分類である「調和型湖沼」と「非調和型湖沼」は、生物が快適に住める湖沼と生存が難しい湖沼の違いなんだなと理解できます。日本の行政では環境調査などで、富栄養湖、中栄養湖、貧栄養湖、腐植栄養湖、鉄栄養湖、酸栄養湖の6つの分類が使われ、前3つが調和型で後3つが非調和型。
水質や生物相による分類なので、ここでいう「湖、沼、池の違い」とは関係ありません。また、堰き止め湖や火口湖といった成因による湖沼分類ともまったく異なる指標です。
(2020年8月追記)
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