近年、頻発する記録的・歴史的な異常気象によって、溜め池の決壊事故やそのリスクが注目されるようになった。

2019年、 「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」が定められたことにより、溜め池管理者による申告が義務付けられ、自治体ごとの溜め池データベース化が進んだ。

また、この法律のおかげで、それまでいろいろな名で呼ばれて、何ともあいまいだった全国の「ため池」の定義がビシっと定まった。

農業用水の供給の用に供される貯水施設であって、堤体及び取水設備により構成される施設であること。ただし、堤高15m以上のダム(河川法第44条第1項に規定するダム及び貯水施設の構造に関する近代的な技術基準に基づいて設置され、かつ、土地改良法等に基づく施設管理規程が整備されているもの)は本法律の対象に含めない。

1999年3月の時点で農林水産省が出した資料には「全国に約17万箇所あるといわれている農業用ため池」とある。これまで、全国の溜め池の数は21万以上とされてきたので、およそ4万ほどが行方不明になっている。ほんとうに4万もの池が廃池になったが消失したのかは、数値の根拠を確認する必要があるが、上記の法律による定義には堤高15m以上の池(いわゆるダム湖)は「ため池」に含めないとあるので、その分も差し引いて考えなければならない。

また、2020年6月29日の日本農業新聞には「ため池新法1年 管理も追い付かず 届け出まだ8割」との見出しのもと、記事の中で「農業用ため池は、全国に15万9543カ所(5月末現在)ある。」と明記していた。なんだかずいぶん減ってしまったなあという感じだ。

数値の出典や根拠は示されていないものの、かなり細かい数であることから自治体データベースに登録されている溜め池の総数ではないかと思う。すべての池がデータベースに登録されているわけではないので、単純に池の数が大幅に減っていると考えるのは早計だが、溜め池の減少は想像以上に進行していると思わざるを得なかった。

今回の義務化で、島根県で把握していなかった溜め池が89カ所も見つかるなど、2020年は歴史上初めて、日本にある溜め池の実態が明らかになる年になるかもしれない

未知の池、忘れられた池、失われた池を歩きで稼ぎだすのも野池めぐりの愉しみだっただけに、すべての池がデータベースに登録され管理されるという状況は、嬉しいような悲しいような・・。

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